教育・心理カウンセラーの花賀作象です。前回は上司から業務の依頼を受けて「やりたくない」と感じたとき、どのようにすればその業務依頼が合理的かどうかを見極め、もし合理的でない場合はどのようにすればその依頼を断ることができるかについて述べていきました。
今回は「『伝えたつもり』を『確実に伝える』に変えよう!」になります。職場のトラブルで最も多いのは、伝達トラブルです。ここでちょっとお聞きしますが、あなたは先週上司や他のスタッフから何を言われたかをきちんと覚えていますか?これはほとんどの確率で忘れているかと思います。大事なことを手帳にきちんとメモする癖がついている人は、手帳を見れば思い出すかもしれませんが、そこまでしていない人が結構多いので、何を言われたかほとんど覚えていませんよね。しかもたとえメモしていたとしてもそのメモを頻繁に見ることがなければ、それをすること自体忘れてしまうわけです。にもかかわらず、もし今週やるべきことを忘れていたときに結構多くの上司が「先週伝えていたはずなのに何でやっていないんだ!」と怒るのです。もちろんこれは指示された側がそれを忘れてしまっていること自体が問題になるのですが、こういう場合は指示する側も「1回伝えたらそれだけで自分の責任を果たした」と思い込んでいることがほとんどです。相手に伝えても相手がそれを忘れてしまっているのでは、それは相手に伝えていないとの同じことです。すなわち「伝えたつもり」になっているわけです。今からどのようにすればこの「伝えたつもり」の状態を「確実に伝える」状態にできるかについて述べていきますよ!!
目次
業務を義務的に捉えている
自分の業務を義務的に捉えている場合、相手への業務依頼や業務指示も義務的になります。そうなると、「こんな面倒な仕事を私がしてやっているんだから感謝してもらいたいな」という横柄な気持ちも出てきますから、自分の部下や周りのスタッフに対する思いやりもなくなってきます。すると、とにかく自分の業務の責任を果たすことだけを考えるようになり、チーム一丸になって何かを達成していこうなどという気持ちはほんのこれっぽっちもなくなっていくのです。その結果、当人に一度伝えたらそれで責任は果たしたと思うようになりますし、何かチームを作って業務をする場合に当人に確認を取らずに勝手にメンバーに入れたとしても、それを社内の掲示板に掲載しておけば責任は果たしたと思うようになるのです。その結果、その依頼や指示をした人は「こっちはちゃんと伝えた」と言い、相手の方は「それを今週するものだとは思っていませんでした」とか「そんなの聞いてません。今ここで初めて知りました」などと言い、言った言わないの水掛け論的問題が発生するのです。これはまさに依頼や指示する側が義務的に業務を行っていることから生じた問題になるわけです。
分かっている前提で話をする
相手が自分の業務依頼する内容を「前にも同じようなことを伝えてやってもらったことがあるし、そんなに詳細に言わなくても大丈夫だろう」という「分かっている前提」で考えて相手に業務依頼してしまいますと、これもトラブルの基になります。部下はたいていの場合、言われたことしかやりませんから、自分の想定していたことを部下がやっていないのを見た上司が「これはここまでやってほしいと前に依頼した時に言っておいたはずなんだけど、なんで今回はやってないの?」と叱るわけです。これは部下が「前に伝えたことは忘れている可能性が大きい」ということを全く考えることなく、そういう業務依頼をした上司の方が悪いのであり、まさに「分かっている前提」が引き起こした弊害と言えます。
上司が部下から聞いたことを忘れる
上司が部下から「この日は○○があってこのイベントに参加できません」という連絡を受けていたにもかかわらず、上司がそれをメモするのを忘れていてイベントの責任者にその部下がこの日に参加できないことを伝えていなかったために、その部下がイベントの責任者から「何で来なかったんだ!」と叱られる羽目になることがあります。これは部下からすれば理不尽な話です。きちんと伝えていたにもかかわらず叱られるわけですから。こういう上司はだいたい自分の業務でいっぱいいっぱいになっていることが多く、精神的な余裕もないので、聞いたことをよく忘れるケースが非常に多いです。これは前述の業務を義務的に捉えていることにも起因しています。業務を義務的に捉えるから業務をすること自体面白いと感じておらず、ストレスばかりが溜まっていって、それが精神的余裕をなくしてしまうのです。こうなってしまうと、上司自体が部下から聞いたことを忘れるので、「伝えたつもり」以前の問題で、これではイベントの責任者に伝わるはずがないのです。こういう場合は、予め上司と共にイベント責任者にも参加できないことを伝えておくのが無難になりますね。
相手に思いやりを持つ
前述の上司が部下から聞いたことを忘れてしまうのは論外として、依頼や指示する側が仕事を義務的に捉えているような場合にしても、分かっている前提で話をしているような場合にしても、この2つに共通しているのは、「相手に対して思いやりがない」ことです。相手に対してきちんと思いやりを持っているなら、「1回伝えて終わり」ではなくきちんと覚えているかの確認は取るでしょうし、前にやったことでも忘れていることを考慮に入れた「分かっていない前提」で丁寧に詳細を伝えるはずです。業務依頼や業務指示を受ける側にしても、相手が思いやりを持ってそういう依頼や指示をしてきたなら、誠意をもってそれに応えるようになるものです。要はそういう思いやりのなさが、相手の「忘れる」ことを助長しているのです。ですから業務依頼や業務指示を出す側は、部下や他のスタッフに対して思いやりを持った対応をすることが何よりも大切になるということです。
手帳を常に持ってメモを取る癖をつける
依頼や指示を出す側が義務的に仕事をしていたり、分かっている前提で話をする人だからといって、自分がやるべき業務を忘れたのをその依頼や指示を出した人のせいにしていてはあなたの成長はありません。手帳は常に持って常にメモをする癖をつけてください。何をいつまでにどの程度まで仕上げる必要があるかをきちんと把握して、それを自分で計画を立てて進めていくことが大事です。計画の立て方については私のブログ「◇3. 今年の年間計画を立てよう!」で詳細に述べていますから、これを参考にして計画を立ててから進めるようにしてください。あなた自身がこのような常にメモを取る人になっていけば、あなたが昇進して上司になったときに部下もメモを普通に取るようになります。そうなると、あなた自身も部下や他のスタッフからの話を忘れることはなくなりますし、部下にもあなたの話が非常に伝わりやすくなりますよね。
以上になります。今回は言った言わないの伝達トラブルを回避するために、どのようにすれば「伝えたつもり」を「確実に伝える」に変えられるかについて述べていきました。
これを実現するためには依頼や指示を出す側は仕事を義務的に捉えるのではなく、もっと部下や他のスタッフに対して思いやりを持った対応が求めれます。一方で依頼や指示を受ける側は、日頃からメモを取る癖をつけるなど、依頼されたこと指示されたことを忘れずに実行できるようにしていく必要があります。双方がこのような姿勢を持つことができれば、それは間違いなく依頼や指示が「確実に伝える」ことができる組織になります。あなたが上司の立場であっても部下の立場であっても今回述べていることを実践し、自分の言ったことが相手に「確実に伝わる」レベルにまでご自身を成長させてください。ではまた次回お会いしましょう!!